陶芸を始めた人のもっとも関心を持つポイントは、おそらく釉薬でしょう。
沢山の文献を読み、釉式や三角図表を書き、テストピースを山ほど作ったのでは?
私も沢山作りました。楽しい思い出のひとつです。
市販の釉薬を買って使うという考えが私には何故かなかった。
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独立してすぐ使っていたのは、益子に伝わってきた釉薬です。
籾殻の灰を使う「糠白釉」、ややくすんだ透明釉の「並白釉」、益子では「青釉」または「銅青磁」と呼ばれる糠白釉に銅を入れた釉薬。
鉄が発色材の「黒釉」、マンガンの「飴釉」。
そしてもっとも益子らしいと言われる「柿釉」。
これは地元に産出する“芦沼石”という大谷石に似た軽い石の粉末です。
これを単味で使うと明るい赤みがかった茶色に発色する。「来待石釉」に似ています。
普通に使うとちょっと田舎っぽい。
この「柿釉」は好きですが、今のところあまり使いません。いつか上手に使ってみたいと思う。
品良く・センス良く、そう言う使い方は柿釉に於いてはとても難しい。
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すべて自家調合で、市販の釉薬を買うことなく,仕事を続けてきたわけですが、いつの頃か半マット、不透明のいわゆる「白釉」を使い始めて、今では「泥並釉」と2種類が主になっています。
釉面が、テラッと光る釉薬よりも、マット状の半つや消し系釉薬が好きなので、文献を参考にして自家調合しています。
前置きが長くなってしまった。
釉薬は使いつくすのが大切で、釉掛けの厚さ、焼成雰囲気、粘土の性質なかでも鉄分を含む割合、粘土の荒さ細かさ、表面処理。
条件が違えば、表情も大分変わる。常識的な使い方からはずれてみるなども必要です。
一つの土、一つの釉薬を“条件を変えてみて”徹底的に使い尽くすことを勧めたい。
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釉薬を多種類使うのは楽しいのですが、自分のめざすモノを把握しにくいという点ではマイナスです。
単に選択の問題になるので、心底ピッタリくるわけがない上に、肝心の自分の望みさえ見失ってしまうかも知れません。
思いつきであれこれやるので、自分の“内面”を確かめる機会が少なくなるわけです。
やたらに釉薬を持っていて、いろいろ使えるというのは、実は何の釉薬も持っていないのと同じです。
既成の釉薬をあれこれ使っていて、気がついたら自分の作品は、他の大多数の人と同じになっている・・・、
そう感じたら試してみて下さい。
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